法華寺境内万葉歌碑

いにしへの古き堤は年深み池の渚に水草生ひにけり

(万葉集巻三 378 山部赤人)

 山部赤人が「故太政大臣藤原(不比等)家之山池(しま)」を詠んだ歌として知られます。「山池」は「俗(よ)にいはゆる作り庭、泉水、築山の事」(本居宣長「玉勝間」巻十三)、「山斎(しま)」の池のことです。中国の園池林泉の思想に由(よ)って、飛鳥〜平城の知識人の人工造園の見出した風景です。昔見たその山池、玉のような石も沈透(しず)いていたかもしれないそれを見て、歌の上句は小異することばを丁寧に言い分けて心に刻むように情趣を移して行き、下句はその今をみつめます。客観的写実ながら、単に視覚の具象にとどまらず、「年深み」(年月を深めて)と漢籍から学んだことばで知的に緊(し)めて、しっとりと時間を沈めた思いの内に、その風景を映しています。
 この旧邸は、藤原京の「城東第」(「扶桑略記」慶雲3年条)ともされますが、やはり平城左京一条二坊の地、平城宮跡の東のそれでしょう。不比等没(養老4年、720)、女(むすめ)光明子立后(天平元年、729)の後、「皇后宮」となり、天平17年に「宮寺」に改められました(「続日本書紀」)。すなわち、法華滅罪之寺、全国の国分尼寺の中心としての大倭国法華寺のはじめです。
 歌は、天平初期での懐古でしょう。

本田義憲先生監修

(奈良市に万葉歌碑を建てる会専門委員・奈良女子大学名誉教授)


所在地

法華寺境内地

光明皇后発願の総国分尼寺で、十一面観音像は皇后ご自身の姿をうつしたと言われています。
近鉄奈良駅からバスで11分、法華寺前下車徒歩5分。
手作りの「お守り犬」の愛らしさでも有名です。


法華寺境内
 JR・近鉄奈良駅→西大寺駅行き・自衛隊前行き15分「法華寺前」下車徒歩3分

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