奈良公園登大路万葉歌碑

見渡せば春日の野辺に霞み立ち咲きにほへるは櫻花かも
(万葉集巻十 1872 作者未詳)
| 春日の山裾に立つ霞。その奥に匂いやかに色の映えるのはあれは櫻の花なのか。奈良の都の貴族官人たちは多く舶来の白梅の花にあこがれましたが、この歌は、古来の花が霞の底に櫻色に映えるのをほめ、かつ、その和語「にほふ」にあてては知的に舶来の「艶」の字をえらびました。歌自身は平淡を出ませんが、名画の残欠のように天平の春を偲ぶべきでしょうか。朱色に塔もそそるなどして。 花は、山櫻です。一重でも八重でも、百人一首の、もとは「奈良の都にのみ」あったと「徒然草」にいう、古の奈良の都の八重櫻も山櫻で、後世のソメイヨシノではありません。 碑は、「万葉」の古写本として著名の「元暦校本」から採ります。平安末期、元暦元年(寿永3年、1184、平家滅亡の前年)に諸写本の校合を了したと奥書する、鳥の子紙の美しい写本です。「万葉」全巻のうち6割余りの歌をのこす上、諸写本の本文の異同を書き入れ、本文の後にはその歌の平安盛期の訓み方を優美な平仮名でとどめて貴重です。筆者は複数、すべて不明で、碑の字も誰のかわかりませんが、源平争乱の南都炎上を知る人にはちがいありません。古筆としても珍重されて一葉二葉の断簡にもなり、碑の部分もその一葉で、平仮名の訓は上の句だけしか残らないのが残念です。 なお、歌は、こんもりとした山のその裾を都から見渡します。「古今集」の歌、「見渡せば柳さくらをこきまぜて都ぞ春の錦なりける」、これは、花ざかりに平安の京を見やって織りなしました。 |
本田義憲先生監修
(奈良市に万葉歌碑を建てる会専門委員・奈良女子大学名誉教授)
奈良公園登大路
登大路は奈良公園の入り口にあたります。
近鉄奈良駅からゆったりした勾配の大宮通を若草山に向かって歩いていくと、10分くらいで到着します。
近くには国立博物館や興福寺、東大寺など、見所もいっぱい。

奈良公園登大路
近鉄奈良駅から登大路を東へ徒歩10分(県庁東交差点、北東側地下道階段横)
これからの建立予定 |