奈良佐保女学院短期大学万葉歌碑

高円(たかまと)の秋野の上のなでしこの花
うらわかみ人のかざししなでしこの花
(万葉集巻八 1610 丹生女王)
| 平城京東郊、 春日・高円 (古くタカマト) 山の麓、 王族貴族たちの雅(みや)びのあと。
聖武、 神亀末年から天平元 (729) 年前後、 大宰府の長官大伴旅人 (665〜731) へ丹生(にふ)女王
(系譜不詳) の贈った歌。 花や葉を挿頭(かざ)す、 髪刺(かんざし)にすることは、 その精霊の力を身につけて生を寿いだ植物呪術(ハーバル・マジック)の古俗から、 アクセサリーとして飾る都雅の美へ展(ひら)きました。 なでしこはやまとのカワラナデシコ (すでに唐(から)風に石竹(なでしこ)などとも書きましたが)、 夏から秋へ、 「萩の花尾花(をばな) (ススキ) 葛花なでしこの花 をみなへしまた藤袴あさがほ (桔梗?) の花」 (巻八1538、 山上憶良 「詠秋野花歌」) と 「七種(くさ)の花」 の一つ、 万葉集中全26首28回、 うち大伴家持11首12回、 庭の花としても蒔かれ造花にさえもされた、 みやびの花でした。 原文に 「なでしこが花」 の場合の多い外、 「の」 の場合もあり、 いま 「の」 に従います。 なでしこは、 いま、 『源氏物語』 など王朝文学のように 「撫でし子」、 可憐な女(おんな)ひとの意をあらわにするかどうかは措いて、 女王自身、 花さく微笑(えまい)の匂わしかった自身を喩(たと)えます。 ただし、 下句、 自身が初初しかったのでという意 (通説) かどうか。 「うらわかみ」 の原文 「丁壮香見」 は主として男性に関し、 即する限り、 おそらく、 「君」 といわず 「人」、 つつましく懐かしく 「人」 と呼ぶその人がかぐわしい壮(わか)さに手折りかざして愛めでたその花、 その昔の私よ、 という意ではないか、 昔の 「人」 のおもかげが映るかと思われます。 歌の形は、 旋頭歌(せどうか) 577・577 。 花にそえて贈ったのか、 謡(うた)い物(もの)風にのびやかに、 ほのかに親しく、 永遠の現在のしるしの花。 |
本田義憲先生監修
(奈良市に万葉歌碑を建てる会専門委員・奈良女子大学名誉教授)
奈良佐保女学院短期大学構内
JR・近鉄奈良駅→
鹿野園行き15分「奈良佐保女学院短大」下車すぐ
これからの建立予定 |