よみがえれ室生寺五重塔
文/阿南誠子
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第5章 後編

 山中にある室生寺は、重機などの近代的な手段を拒む。それだけに、資材の搬入には、ひときわ人の手による苦労がかかっていた。昔ながらの丸太を組み上げた素屋根の、足場の一本一本から、それは始まっていたことをあらためて思う。かかわった人たちにとって、その厳しさも今後少しずつ、なつかしさに変わっていくのだろう。
「まさにパニックでした」と、塔が半壊した当時のことを語る、室生寺執事の松平雅之氏は、その日から始まった目まぐるしく、重圧がのしかかった日々に思いを寄よせる。しかし、
 「村の人々は、塔が壊れたその日から、参道に倒れこんだ木をかたづけ、道をあけてくれました。全国から、寄付をお寄せ頂きました。工事は、大きな支障なく、予定より早いペースで順調に進みました。不思議なくらいです。わたくしには、半壊したのがこの寺の中でほかならぬ国宝五重塔だったからではないかと思えるのです」


「西洋の石の文化は遺産だけが残っていますが、日本の木の文化は今に続いています。その意味するところを、わたしたちは大切にしなければなりません」
 塔は痛手をうけたが、それによって、それぞれの人々の心に、何がしかの気づきが生まれたのだと思う。そして、塔はまた、外見だけでない新しい魅力が増していくのだろう。

最後に・・・お話を伺うことで、あるいは、ただ黙って見せていただくことで、感動や驚きを与えてくださった関係者の皆様のおかげで、かろうじて担当を務めることができました。ありがとうございました。

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