|
|
||||
| 文/阿南誠子 | ||||
|
|
||||
|
|
||||
塔の屋根は四方にむかってせり上がるような形をしている。さらに、のきづけの断面も、下から上にむかって内から外へと角度がある。檜皮を重ねながら、そのカーブを出していかなければならない。重ね終わる段階になると、皮は一枚ずつ、微調整しながら並べ、最後はやや厚い上目皮を並べる。上目皮を敷くところは、上の層からの雨おちの部分でもあり、最もいたみやすい部分。上目皮はこれを守る働きもある。 そっと竹釘を手に取らせていただいた。長さ3、4センチ、マッチ棒よりも少し太いくらいに竹を削ったものだ。刺しこむために、一方が斜めにカットしてある。屋根全体を葺くのに無数の竹釘を使う。 静かな時間が流れている。竹釘を打つ音が一定のリズムを刻んでいる。 同時に別の層では、壁の色を塗り直すための下地の作業が行われてもいた。これには、塗装関係の専門業者があたる。 |
![]() |
|||
![]() |
建造物の工事には、幾種もの専門業者がかかわることになるのは、文化財に限らない。ただ、文化財の場合、木工事、屋根工事、塗装、金物類の加工などが、みな伝統を受け継いできた特殊な業者だ。 奈良県における文化財建造物の修復は、いずれも奈良県文化財保存事務所が工事の主体者となる。そこから大手のゼネコン等に発注される場合もあるが、この五重塔では、保存事務所から各業者へと発注が行われている。県が直接指揮をとるかたちだ。 |
|||
|
「ここは建物が小さいこともあり、中間業者は入っていません。それだけに、進行の具合を感じながらここで仕事ができます」という松田氏。 解体の時から、いつの時代にどのような修復を経てきたのか、当初はどうなっていたと思われるのかという調査に基づき、この復旧工事をどうするかというプランが決まった。その工程の一つ一つが、国の宝を未来へと継承するものであり、中にはその技術が今後どのように残っていけるのか、少しの不安をはらんでいることを思うと、平成のこの復旧工事も、ひとつの忘れがたい塔の歴史となるのだと思う。かかわるすべての人たちの技術、手間、思いなどなどが、折り重なって小さな塔を包む。それがハーモニーのように心の中に響いてくるような感覚が身体をよぎる。 破損した部材を、今、平成十一年の焼き印をつけた新しい木材が補っている。最初の取材の時、解体の現場で「明治」と墨書きされた部材を見て、百年の時の流れを感じたように、いつかだれかがこの焼き印を見て、同じ感慨を覚えるだろう。 |
![]() |
|||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||